第70回を記念して山梨書道協會会長である花田龍溪の個展を開催する運びとなりました。ご紹介も含め前個展の際に寄文いただいた文章を割愛させていただきながらここに記させていただきます。
文房四寶の知識豊かな先生で、逸品の筆墨紙を使っての雅味と品位ある墨色の労作を拝見し感銘を受けました。
花田龍溪の書は小杉弧峯氏、良友である渡邊寒鷗氏らと共に学び、戦後間もない頃に桑原翠邦氏、金子鷗亭氏、二宮景雲氏、徳野大空氏、山下涯石氏、松田江畔氏との出会いによって書の見方・技法などを体感したことが大きな影響を受けている。
若い頃から取り組んでいる古典臨書の裏づけが脈打ち、滔々と流れた見事な作品であり、妙味多彩な墨の香りの絶品は、知らず幽玄の世界へと引き込まれる感動を与えてくれる。
感性の豊かさは抜群であり、作品の随所にその巧みさ・妙味が心を揺さぶってくれる。若い頃から書写の研究はもとより、臨書に励んでいました。
私とは共に續木湖山先生に親身なるご指導を頂き「お互いに今在るは、續木湖山先生のお力の賜物」と語り合う半世紀に及ぶ書友、畏友であります。温雅な人柄と、高度な実力、抜群の指導力を持つ先生は信頼も厚く、誠に貴重な存在です。
同級生であるが夫々戦中戦後の不如意な経験をしたが我々は常に書が心の支柱であった。或いはこれを業として、業餘の趣味として、今日まで継続してきたことは稀有のことかもしれない。
古碑帖を根底にした持ち前の沈潜した筆画と、淡雅な構成に磨きをかけ、その書法によって多くの俊秀を育成されている。
『寄龍溪雅兄書作展』 寒鷗渡邊忠治
悠々五十有餘年 欲問深沈文字禅 今日龍溪得雲雨 還如振翼舞長天
ご挨拶
平成十一年九月、古稀を記念して西新宿センタービル五十一階の回生アートギャラリーにて個展を開催してから十五年の歳月が経過した。八十七年という歴史を積み重ねてきた山梨書道協會七〇回記念展の企画展として、不肖私の二度目となる個展を開催していただけることとなりました。
現在八十八歳米寿を迎え、第一回個展の出品作数点を含め、それ以降に製作した作品から選書したものを併せ四十三点を書道人生後半となる生きざまとして展示させていただきました。ご参観の皆様方の厳しいご批評、ご叱正をいただければ幸甚です。これから何年元気に筆を執ることが出来るか分かりませんが、これを期に更なる飛躍を求めて学書に精進する所存でおります。今後とも皆様のご指導ご鞭撻をお願い申し上げます。
この度の個展開催は、望月大耿氏・子耿氏のご父子、ならびに望月大弦氏の絶大なるご支援とご鞭撻なくしては開催出来なかったもので、出品作品の選書に審美眼を拝借し、写真撮り、作品集の企画から編集・製作等総ての面でのご助力をいただきました。今展は私自身の書道人生後半の大きな節目となりました。心より御三方のお力添えに感謝するものであります。
最後にこの度のご参観くださいました皆様方に心から御礼申し上げ、ご挨拶といたします。
平成三〇年十二月
花田龍溪
『龍溪展』作品図録 一部ご紹介